大阪地方裁判所 平成7年(行ウ)29号 判決 1996年8月28日
大阪市淀川区宮原一丁目二番三五号
原告
アトラス建物株式会社
右代表者代表取締役
高瀬清
右訴訟代理人弁護士
比嘉廉丈
同
比嘉邦子
同
瀬口孝
大阪市淀川区木川東二丁目三番一号
被告
東淀川税務署長 笹倉達也
右指定代理人
種村好子
同
長瀬顕
同
北畠昭二
同
松田光弘
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告が原告に対して平成五年九月二九日付けでした平成三年一一月一日から平成四年一〇月三一日までの事業年度の法人税に係る更正の請求につき更正すべき理由がない旨の通知を取り消す。
二 被告が原告に対して平成六年一月三一日付けでした平成三年一一月一日から平成四年一〇月三一日までの事業年度の法人特別税に係る更正の請求につき更正すべき理由がない旨の通知を取り消す。
三 被告が原告に対して平成五年九月二九日付けでした平成三年一一月一日から平成四年一〇月三一日までの課税期間の消費税に係る更正の請求につき更正すべき理由がない旨の通知を取り消す。
第二事案の概要
一 本件は、原告が訴外株式会社アイチ(以下「アイチ」という。)に対する連帯保証残債務一六億四〇〇〇万円の支払に代えて、別紙物件目録記載一の土地(以下「本件土地」という。)及び同目録記載二の建物(以下「本件建物」という。)の所有権を移転する旨の代物弁済をしたところ、<1>右代物弁済により取得した訴外木本一馬(以下「木本」という。)に対する求償債権が貸倒れとなったから、右代物弁済により消滅した連帯保証残債務相当額は、平成三年一一月一日から平成四年一〇月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)の損金に算入されるべきであると主張して、本件事業年度の法人税に係る更正の請求につき更正すべき理由がない旨の通知(以下「法人税に係る本件通知」という。)及び本件事業年度の法人特別税に係る更正の請求につき更正すべき理由がない旨の通知(以下「法人特別税に係る本件通知」という。)の各取消しを求めるとともに、<2>右代物弁済による本件建物譲渡の価額に係る消費税額は、貸倒れに係る消費税額として平成三年一一月一日から平成四年一〇月三一日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税額から控除されるべきであると主張して、本件課税期間の消費税に係る更正の請求につき更正すべき理由がない旨の通知(以下「消費税に係る本件通知」という。)の取消しを求めた事案である。
二 争いのない事実
1 原告は、不動産賃貸業等を目的とする株式会社である。
2 原告は、平成二年七月一〇日、アイチとの間で、原告代表者である高瀬清(以下「高瀬」という。)のアイチに対する一五億円の借入債務につき連帯保証する旨の契約書(乙二)を取り交わした。
3 原告は、平成二年七月一〇日、アイチとの間で、本件土地建物について債務者を高瀬、権利者をアイチ、極度額を一九億円、被担保債権の範囲を金銭消費貸借取引、手形割引取引、手形債権及び小切手債権とする根抵当権を設定する旨の契約を締結し(以下「本件根抵当権設定契約」という。)、同日、その旨の根抵当権設定仮登記をした。
4 原告は、平成二年九月一〇日、アイチとの間で、高瀬のアイチに対する四億円の借入債務につき連帯保証する旨の契約書(乙三)を取り交わした。
5 原告は、平成二年九月一〇日、アイチに対し、本件根抵当権の極度額を二四億円に変更する旨の契約を締結し、同日、その旨の付記登記をした。
6 原告は、平成四年三月四日、アイチに対し、前記第2項及び第4項記載の各連帯保証契約書(乙二、三)に基づく残債務一六億四〇〇〇万円(以下「本件連帯保証残債務」という。)の支払に代えて、本件土地建物の所有権を移転する旨約し、翌五日、本件土地建物の所有権移転登記をした(以下「本件代物弁済契約」という。)。
7 原告の本件事業年度の法人税及び法人特別税に係る確定申告、更正の請求、更正の請求に対する通知、審査請求、裁決並びに本件課税期間の消費税に係る確定申告、更正の請求、更正の請求に対する通知、異議申立て、異議決定、審査請求、裁決は、それぞれ別表記載のとおり行われた。
三 争点についての当事者の主張
1 法人税及び法人特別税について
(一) 原告の主張
(1) 高瀬は、アイチとの間で、アイチから平成二年七月一〇日に一五億円、同年九月一〇日に四億円を借り入れる旨の金銭消費貸借契約書を取り交わしたが(乙二、三)、これはあくまでも便宜上のものにすぎず、実際には、高瀬の知人である木本がアイチから右一九億円を借り入れたものである。したがって、原告は、本件代物弁済により木本に対して求償債権を取得するところ、木本が平成三年一二月二六日に多額の債務を抱えて自殺したことにより、右求償債権は貸倒れとなったから、本件代物弁済により消滅した本件連帯保証残債務相当額は、本件事業年度の損金に算入されるべきである。
(2) 仮に、右一九億円の借主が高瀬であるとしても、高瀬は、木本に対して右一九億円をそのまま貸し付けていたもので、高瀬の右貸付債権は木本の自殺により貸倒れとなったところ、原告は、高瀬が全額出資する個人会社で、両者の法人格は同一視されるべきであるから、右貸倒れに伴って本件連帯保証残債務相当額は本件事業年度の損金に算入されるべきである。
(二) 被告の主張
(1) アイチから右一九億円を借り入れたのは高瀬であり、原告は、高瀬に対して求償債権を有するのであるから、本件代物弁済契約により消滅した本件連帯保証残債務相当額を本件事業年度の損金に算入することは許されない。
(2) 高瀬が全額出資しているからといって、原告と高瀬の法人格を同一視することはできない。
2 消費税について
(一) 原告の主張
前記1(一)のとおり、アイチから一九億円を借り入れたのは木本であるところ、木本の自殺により原告の木本に対する求償債権は貸倒れとなったから、本件代物弁済契約による本件建物譲渡の価額に係る消費税額は、消費税法三九条一項、同法施行令五九条に基づき本件課税期間の消費税額から控除されるべきである。
(二) 被告の主張
前記1(二)のとおり、アイチから一九億円を借り入れたのは高瀬であるから、原告の主張はその前提を欠くというべきである。
また、消費税法三九条一項、同法施行令五九条に基づく貸倒れによる消費税額の控除の対象となるのは、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権であって、連帯保証人が代物弁済により主債務者に対して取得した求償債権は、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する債権に当たらないから、右求償債権が貸倒れとなったとしても、代物弁済による資産譲渡の価額に係る消費税額を控除することは許されない。
第三争点に対する判断
一 当事者間に争いのない事実に、証拠(甲一、二の一ないし三、三及び四、五の一、二、六、乙一ないし一〇、一一の一、二、一二、一三の一、二、一四ないし一七、原告代表者)を総合すると、以下の事実が認められる。
1 高瀬は、昭和四五年頃、木本と知り合い、四〇〇〇万円の融資を受けたことがあったところ、昭和五六年頃、同人から、二億円の融資を依頼され、これに応じた。当時、木本は、日本土地株式会社(以下「日本土地」という。)を経営し、不動産取引や株の買占めで多額の利益を得ていたことから、高瀬は、木本の資力を信頼し、右融資に当たって借用証や担保の差入れを求めたり、返済時期等を取り決めたりしたことはなかった。木本は、右二億円を株の買占資金に投入し、高瀬に対し、平成元年初め頃までに、右二億円全額を利息を付して返済した。
2 高瀬は、平成元年初め頃、木本から、株の買占資金として二〇億円を融資するよう依頼され、同年三月中旬、日本住宅金融株式会社から、自己所有の不動産を担保にして二〇億円を借り入れた上、木本に対し、右二〇億円全額を貸し付けた。高瀬は、既に前記二億円の返済を受けていた上、木本から、株の買占めで一七五億円もの利益を上げた実績を聞かされていたこともあって、右貸付に際しても、借用証や担保の差入れを求めたり、返済時期等を取り決めたりするようなことはしなかった。
3 高瀬は、木本から、その後も度々株の買占資金の追加融資を求められ、平成二年七月頃までに合計約一三〇億円を貸し付けた。高瀬は、木本が株の買占めに成功して利益を上げない限り、それまでの貸付金が回収不能となることから、木本から求められるままに追加融資を繰り返したもので、木本に対する貸付は、すべて高瀬自身が富士銀行やアイチ等の金融機関から、自己及び親族所有の不動産や木本が経営する会社の株式を担保にして金員を借り入れた上、これをそのまま全額木本の指定する銀行預金口座に振り込む方法によって行われた。なお、これら追加融資に際しても、高瀬と木本の間で、借用証が取り交わされたり、担保が提供されたりしたことは一切なかった。
4 高瀬は、平成二年七月頃、木本から、株の買占資金として二〇億円を追加融資するよう求められた。これに対し、高瀬は、既に自己及び親族所有の不動産にはすべて抵当権が設定されていて、それ以上の借入は困難であったことから、右追加融資の申入れをいったん拒絶したものの、木本が株の買占めに成功しない限り、木本に対する貸付金も回収不能となるため、やむなく原告所有の本件土地建物を担保にして右金員を借り入れた上、これを木本に貸し付けることにした。そこで、高瀬は、平成二年七月一〇日、日本土地の事務所において、債務者を高瀬、連帯保証人を原告及び木本とする一五億円の金銭消費貸借契約書(乙二)の債務者欄に署名押印し、さらに、原告代表者として、連帯保証人欄に記名押印した上、アイチとの間で、本件根抵当権設定契約を締結し、右登記に必要な書類を交付した。また、高瀬は、原告が取締役である同人の債務を連帯保証するためには商法二六五条一項に基づく取締役会の承認が必要であることから、アイチに対し、予め用意していた右連帯保証及び本件根抵当権設定契約締結を承認する旨の取締役会議決書を交付した。右一五億円は、木本が開設した高瀬名義の銀行預金口座に振り込まれ、木本において、これを全額株の買占資金として費消した。なお、木本は、右金銭消費貸借契約書(乙二)作成の際、連帯保証人として署名押印した。
5 高瀬は、平成二年九月頃、木本から、四億円の追加融資を求められた。そこで、高瀬は、同月一〇日、債務者を高瀬、連帯保証人を原告及び木本とする四億円の金銭消費貸借契約書(乙三)の債務者欄に署名押印し、さらに、原告代表者として、連帯保証人欄に記名押印した上、アイチとの間で、本件根抵当権の極度額を二四億円に変更する旨の契約を締結し、その旨の付記登記をした。右四億円についても、高瀬名義の前記銀行預金口座に振り込まれ、木本においてこれを株の買占資金として費消した。なお、木本は、右金銭消費貸借契約書(乙三)作成の際にも、連帯保証人として署名押印した。
6 右一五億円及び四億円の各金銭消費貸借契約は、平成三年三月一一日、同年六月一〇日、同年一二月五日にそれぞれ更新された。右各更新の際には、原告、高瀬、木本及びアイチが一同に会して手続を進めたが、これら関係者から、右各借入の主債務者が高瀬とされていることに関して異議が述べられるようなことは一度もなかった。
7 高瀬は、木本が一向に貸付金を返済せず、また、右貸付に際して同人から、担保提供はおろか、借用証の差入れさえ受けていなかったこともあって、右貸付金の回収に不安を抱き、平成三年頃から、木本に対し、債務確認書を差し入れて具体的な弁済方法を約束するよう強く求めるようになった。これを受けて、木本は、平成三年七月一三日、高瀬に対し、アイチから借り入れた前記一九億円を木本の責任においてアイチに返済する旨の確認書(甲一)を交付した上、同月三一日から平成四年一月九日までの間に、アイチに対し、同社に担保として差し入れていた吉本興産株式会社(以下「吉本興産」という。)振出の手形を決済する方法で合計二億六〇〇〇万円を支払った。なお、吉本興産は、木本の関連会社であって、高瀬は、右手形に裏書をしていた。
8 木本は、平成三年一二月二六日、事業の失敗を苦にして自殺した。原告は、アイチが本件土地建物以外の原告資産に対して強制執行することを恐れ、平成四年三月四日、アイチとの間で、本件代物弁済契約を締結した。そこで、原告は、本件事業年度の決算報告書に本件代物弁済契約に係る固定資産譲渡益一五億八二〇〇万五六五四円及び高瀬に対する仮払金一六億四〇〇〇万円を計上した上、平成四年一二月二五日、これを前提に税額計算をした本件事業年度の法人税及び法人特別税に係る確定申告並びに本件課税期間の消費税に係る確定申告をした。
以上の事実が認められる。
二 そこで、まず、本件事業年度の法人税及び法人特別税に関して貸倒損失の存否を判断する前提として、アイチからの一九億円の借入金の主債務者が高瀬であるか、それとも木本であるかについて検討する。
1 前記認定事実、殊に、<1>高瀬は、木本から、株の買占資金の融資を頼まれ、アイチをはじめとする金融機関から、自己及び親族所有の不動産を担保にして一〇〇億円以上もの金員を借り入れた上、これを全額木本に貸し付けてきたところ、右一九億円についても、木本から追加融資を依頼され、従前の貸付金が回収不能となることを恐れて、融資を承諾したものであって、自らの意思と判断に基づいて金銭消費貸借契約書(乙二、三)の債務者欄に署名押印しているばかりか、さらに、原告代表者として連帯保証人欄に記名押印し、アイチとの間で、本件根抵当権設定契約を締結した上、予め用意していた右連帯保証を承諾する旨の取締役会議事録をも交付していること、<2>高瀬は、アイチとの間で、その後数回にわたって右金銭消費貸借契約を更新しており、その際、自己が主債務者とされている点に関し異議を述べたようなことは一度もなかったこと、<3>原告は、木本の死亡後、自ら積極的にアイチとの間で、本件代物弁済契約を締結した上、本件事業年度の決算報告書に本件代物弁済契約に係る固定資産譲渡益及び高瀬個人に対する仮払金を計上し、これを前提とする確定申告をしていること等に照らすと、右一九億円の借入金の主債務者は高瀬であると認めるのが相当である。
2 もっとも、この点に関し、原告は、右借入金の主債務者は木本である旨主張し、これを裏付ける事実として、<1>木本が高瀬に対し、右一九億円については木本においてアイチに対して返済する旨の確認書(甲一)を交付していること、<2>右一九億円は、木本が開設した高瀬名義の銀行預金口座に振り込まれた後、木本において費消されていること、<3>木本は、アイチに対し、右一九億円の担保として関連会社である吉本興産の手形を差し入れ、その決済により合計二億六〇〇〇万円を返済していることを指摘する。
(一) まず、<1>の点については、確かに、右確認書(甲一)には、「私が株式会社アイチから貴殿の借入名義を使い、かつ貴殿経営の会社所有の左記不動産を担保にして借り入れた金一九億円の債務につきましては、今までどおり引き続いて私の責任において株式会社アイチに返済し、貴殿に迷惑をかけないことを確約します。」旨記載されており、右文面によると、木本は、自己がアイチから右一九億円を借り入れたとの認識を有していたようにみえなくもない。
しかしながら、前記一7認定のとおり、右確認書(甲一)そのものは、高瀬、木本間において、一連の借入債務の返済が困難となり、その具体的な返済方法を巡って話合いが続けられる中で作成されたものであるから、右書面の性質上、その記載内容が右一九億円借受当時の木本の心境をそのまま表白したものであるとみるにはいささか疑問が残る上、この点を暫く措くとしても、金融機関からの融資金を費消した者が、右借入を起こした相手方に対して内部的にその責任を認め、弁済を約することは世情一般によくあることで、その一事をもって、対金融機関の関係においても、右費消者が法律上、主債務者としての責任を負うことになるとはいえないことは明らかである。これに加え、右一九億円の借入債務については、前記一4及び5で認定したとおり、高瀬が自己の意思と判断に基づき債務者として署名押印したというのであるから、右確認書(甲一)が存在するからといって、前記認定に消長を来さない。
(二) 次に、<2>の点については、前記一1ないし7で認定したとおり、高瀬は、木本から求められるまま金融機関から合計一〇〇億円以上もの金員を借り入れた上、これをそのまま全額木本の指定する銀行預金口座に振り込む方法で貸し付け、木本において株の買占資金として費消してきたものであって、その際、木本が借用証等、借入を証する書面を差し入れたことは一度もなかったというのであるから、問題の一九億円が、木本の開設した高瀬名義の銀行預金に振り込まれ、木本においてこれを費消したとしても、それまでの両人間の貸借関係と何ら変わるところはないというべきであって、右事実をもって前記認定を弾劾する反対事実であるということはできない。
(三) さらに、<3>の点については、借入に際し、連帯保証人が債権者に対して担保を差し入れ、自らの保証債務を弁済することは当然のことであるところ、前記一4及び5で認定したとおり、木本は、一九億円の借入について連帯保証人となっているのであるから、同人がアイチに対して担保手形を差し入れ、右手形を決済して自らの保証債務を一部弁済したからといって、このことをもって、木本が主債務者であることを示す事実であるというわけにはいかない。
3 そうすると、アイチからの一九億円の借入金の主債務者は高瀬であり、原告は、高瀬に対して求償債権を有するのであるから、本件代物弁済契約により消滅した本件連帯保証残債務相当額を本件事業年度の損金に算入することは許されないというべきである。
4 なお、原告は、右借入債務の主債務者が高瀬であるとしても、原告と高瀬の法人格は同一視されるべきであるから、高瀬の木本に対する貸付債権が貸倒れになったことにより本件連帯保証残債務相当額は本件事業年度の損金に算入されるべきである旨主張するけれども、前記第一の二1のとおり、原告は、独立の法人格を有する株式会社であるから、高瀬が木本に対して貸付債権を有するからといって、原告も木本に対して貸付債権を有することになるなどということは到底できず、原告の右主張はおよそ採用の限りではない。
三 次に、本件代物弁済契約による本件建物譲渡の価額に係る消費税額が、消費税法三九条一項、同法施行令五九条に基づく貸倒れによる消費税額の控除の対象となるか否かについて判断する。
原告は、アイチから一九億円を借り入れたのは木本であって、木本の自殺により原告の木本に対する求償債権は貸倒れとなったから、本件代物弁済契約による本件建物譲渡の価額に係る消費税額は、消費税法三九条一項、同法施行令五九条に基づき本件課税期間の消費税額から控除されるべきである旨主張する。
しかしながら、前記二で認定説示したとおり、右一九億円の借主は木本ではなく、高瀬であるから、原告の右主張はその前提を欠き、その余の点について検討するまでもなく、理由がないというべきである。
さらに、この点を暫く措くとしても、消費税法三九条一項によると、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき、当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなったときに当該領収することができなくなった課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額の合計額を控除するものとされているところ、連帯保証人が代物弁済により主債務者に対して取得した求償債権は、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する債権に当たらないから、右求償債権が貸倒れとなったとしても、代物弁済による資産譲渡の価額に係る消費税額を控除することは許されないというべきである。
そうすると、この点に関する原告の主張はいずれにしても採用することができない。
四 以上によれば、本件各通知の取消しを求める原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 鳥越健治 裁判官 福井章代 裁判官 出口尚子)
物件目録
一 所在 大阪市中央区和泉町二丁目
地番 三九番一
地目 宅地
地積 三五二・九四平方メートル
二1(一棟の建物の表示)
所在 大阪市中央区和泉二丁目三九番地
構造 鉄筋コンクリート造陸屋根七階建
床面積 一階 二八五・三五平方メートル
二階 三一八・四六平方メートル
三階 三一八・四六平方メートル
四階 三一八・四六平方メートル
五階 三一八・四六平方メートル
六階 三一八・四六平方メートル
七階 二二七・七二平方メートル
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 和泉町二丁目三九番二
種類 事務所兼倉庫兼荷捌所
構造 鉄筋コンクリート造五階建
床面積 一階部分 二五三・七〇平方メートル
二階部分 二八六・五一平方メートル
三階部分 二八六・五一平方メートル
四階部分 二八六・五一平方メートル
五階部分 二八六・五一平方メートル
2(一棟の建物の表示)
所在 大阪市中央区和泉町二丁目三九番地
構造 鉄筋コンクリート造陸屋根七階建
床面積 一階 二八五・三五平方メートル
二階 三一八・四六平方メートル
三階 三一八・四六平方メートル
四階 三一八・四六平方メートル
五階 三一八・四六平方メートル
六階 三一八・四六平方メートル
七階 二二七・七二平方メートル
(専有部分の建物の表示)
家屋番号 和泉町二丁目三九番三
種類 居宅兼倉庫
構造 鉄筋コンクリート造二階建
床面積 六階部分 二八六・五一平方メートル
七階部分 一九七・二九平方メートル
別表
申告等の状況
<省略>